短編集

「あ!!わかったよ、香織が言いたい事」

「凛にはわかった?」

「?」

「美沙紀ってば‥‥。年寄は早起きでしょ。4時に起きたっておかしくないじゃない」

「それで?」

「美沙紀って鈍感なんだね~」

「つまり、あたしが言いたいのは、そのおじさんが4時に見たわけじゃなくて、4時に起きたから、奥さんに言ったんだよ」

「本当は、2時半に見てたって事だよ。確証はないけど、たぶんね」

「なんだあ、そうだったのかあ~」


安堵の溜息をつく私。

凛と香織はあはははっと笑っている。

少し恥ずかしいけど、2人のおかげで今日は安心して眠れそうだし、そのまま笑わせておこう。


「やっぱり、幽霊とか妖精とか、そーゆーモノなんて存在しないよねえ」


私が口に出すと、凛がこちらを振り返った。

私はそれに気づかず、教室でカンフーをする少女を見つめる。

艶やかな黒髪の美少女なのだが、何故か最近、格闘技を始めた少女だ。

凛が引っ越してきたのと、ちょうど同じ頃から始めたような気がする。

もうすぐ、小学校も卒業だというのに。


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家に帰ってしたことといえば、昨日とまったく同じことだ。

母親たちがいないので、自分で夕飯を作る。

そして、片付け。

今は、リビングでテレビを見ている。

ぼーっと見ていたせいか、気づくと8時を回っていた。

そろそろ、お風呂へ入るか。

テレビをつけっぱなしのまま、風呂へ向かう。

家の風呂は広くないし、狭くもない。

髪を洗い、湯舟にはいる。

寒いので、首までしっかりと浸かる。

昨日と今日はいろいろあったな‥‥

幽霊だと本気で思ってしまったし、2人には笑われた。

なんだか散々だ。

でも、良い事だってあった。

2人が本当に信頼できる友達だとわかったってことだ。

こんなこと、もし両親が旅行に出かけてなかったら気づけなかった。

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