短編集

それにしても、昨日は凛に言われるまで、両親の旅行のことをさっぱり忘れていた。

自分が本気でバカなんじゃないかと一瞬疑ったし。

あのまま、遊ぶ約束してたら、やばかったよなあ。

――ん?

何か、引っかかる。

何か、見落として気が‥‥?


「ま、いっか」


難しい事を考えるのは嫌いだ。

それに、これで全部解決。

全部終わったし。

湯舟から上がり、シャワーを浴びる。

ふうと言いながら、風呂からでた。

すぐそばのリビングにいき、パジャマに着替える。

リビングはしーんとしている。

こたつをぱちっとつける。

もぞもぞさせながら中に入り、ほおっと溜息。

今日は宿題ないし、楽だな。

テレビを見ようと、リモコンを探す。


「‥‥あれ?」


違和感に気づく私。

動きが止まる。

顔が青ざめていくのがわかる。

だって。

私、風呂に入る前はテレビを付けっぱなしだったはず――。


「誰が‥‥消したの‥‥?」


それと同時に、もう一つの事にも気づく。

私は鈍感なはずなのに。

風呂には入ってる時感じた引っかかり――

私は、昨日は凛に言われるまで、両親の旅行のことをさっぱり忘れていた。

そう、凛に言われるまで。

私が両親に旅行の事を言われたのは一昨日の夜。

昨日は朝からそのことを忘れていた。

じゃあ、何で、凛はその事を知っていたの――?

どくんという心臓の音が聞こえる。

寒気がする。

後ろの気配。
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