短編集

別にあの子が凄いわけでもないじゃない……。

2人の友達もその子の所に行ってしまった。

しょうがなく、私もついていく……。


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昼休み、私が友達と喋っていると、あの子が騒ぎ出した。


「ない!!」

「どーしたの?」

「今朝、見せたアレがなくなったの!!」


ミュージックプレイヤーが無くなったらしかった。

皆、心配そうにその子の周りに集まる。


「高かったのよ!!誰か盗ったんじゃないの!?」

「そんなことないでしょ。ちゃんと探せば……」

「じゃあ、探してっ!!」

その子に命令されて、皆四つん這いになって探し始めた。

私と話していた友達もだ。

しょうがないので、私も探すふりをして床に座り込む……。


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結局、あの子のミュージックプレイヤーは見つからなかった。

担任に盗まれた、と言ったらしい。

元々学校には持ってきてはいけないものだったのだけど、5時間目はその話をされた。


「持ってる人は出てきてください」


シーンと静まり返る教室。

出てくるわけがない……。

それに、誰かが盗ったと決まったわけでもないもの。

あの子自身がなくしたかもしれないじゃない。


「ちょっと!!私のミュージックプレイヤー返してよ!!」


怒りをこらえきれなかったのか、その子が騒ぎ出した。

先生がその子を宥める。


「静かにしなさい。そもそも学校に持ってきてしまったのが悪いのですから……」


先生って大変だな。

私は冷めた目でその子を見つめていた。

クラスメイトも、冷めた目で見つめている。



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