短編集

放課後、私は朝の2人の友達と帰ろうとしていた。

その前に、数学の提出物を出し忘れていた私は、職員室へ向かった。

あまり使われないほうの階段に何か落ちていた。

ピンクのミュージックプレイヤー……。

あの子のだ。

ここで落としていたんだ。

自分で落としたくせに、盗られたと言って……人騒がせな子だ。

それを拾う。

あの子に返してあげようかと思った。

でも、昼休みがあの子のせいでつぶれたことを思い出し、ふっと気持ちが変わった。

ミュージックプレイヤーを制服のポケットに入れる。

ゆっくりと歩き、職員室に数学の提出物を届けにいく。


********************************


翌日、土曜日で休みだった。

2人友達と一緒に遊びに行った。

興味もない恋愛映画を見て、感動したーと決まり文句を言い合い、昼食を食べる。

私たちはファーストフード店に来た。

窓際の席に座る。

友達二人が並んで座り、私が一人で座る。

奥の席には、赤ん坊を連れた母親が2組座っていた。


「ねえ、何食べる?」

「ポテトーとハンバーガー」

「……あ、チーズバーガーで」


ぺちゃくちゃと喋る母親。

ほったらかしの赤ん坊。

それをじっと見つめる私。

注文品が来るまで話し続ける友達。

店員が通り、ベビーカーにぶつかる。

赤ん坊のベビーカーがわずかに動く。

はっとする。

赤ん坊のベビーカーの後ろには不良っぽい人たちが座っていた。

そして、床はそちら側に微妙に斜めっている。

人が通るたびに、ベビーカーにぶつかり、動いていく。

危ない。

声を上げるつもりだった。

でも、ふっと気持ちが変わる。
< 6 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop