短編集

「おめでとっ」


口々に言ってくるクラスメイト。

それは本心なのかな。

‥‥違うよね。

愛想笑いを浮かべ、ありがとう、とお礼を言う私……


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家へ帰ると、ニコニコ笑っている母親が、玄関に立っていた。

何よ、この人。

どうせ、テストの結果が知りたいんでしょう?

にっこり笑って、結果を見せる。


「まあ!!すごいじゃない。やっぱり私の子ねえ」


騒ぎ出すお母さん。

にっこり笑っている私。

そのあいだにこっそり居間に行く。

ケーキの箱が置いてあった。

お母さんが買ってきたんだろう。

それを持って2階に行く。

自分の部屋に入り、ドアをぱたんと閉める。

1階から、お母さんの声が聞こえてきた。


「ケーキ買っておいたのよ~……あれ?おかしいいわね……」

「どーしたのー?」

「ああ、……ケーキがないのよ……。おじいちゃんが食べちゃったのかしらねえ?」


大声で叫ぶお母さん。

私は、そっかあ、残念、とお母さんに適当に返事をする。

中身はショートケーキとモンブランとレアチーズケーキだった。

一緒に持ってきておいたフォークで一口食べる。


「おいしい……」


にっこり笑いながら、ケーキを食べてる私。


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フォークを庭に投げ捨て、箱を紙ヒコーキにし、右手で飛ばす。

窓から紙ヒコーキの飛ぶ様をじっと見る。

さっさと墜落すればいいのに。

制服を脱ぎ、私服になる。

紺色のスクールバックをあける。

内側のポケットの中からポーチを出す。


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