まーくんの部屋
まーくんはあの日のことを、結局一度も口にしていない。
私はそれをいいことに、無かったことにしようとしている。
まーくんは今日も晩ご飯を作ってくれた。
ピピピ…ピピピ…
「あ、いいよ 俺が行く」
食べ終わって食卓で話していると、溜めているお風呂がいっぱいになった音がした。
私が行こうとしたのに、まーくんの方が席が近いから、その権利を奪われた。
無理にでも行けばよかったと思いながら見ていると、
偶然その広い背中を見てしまった。
Yシャツを通過して想像する、生のまーくんの背中。
着痩せしているけど、意外に筋肉質なまーくんの体。
腕も胸も、
吸い付くような男の肌。
私はまーくんと寝たあの夜の感触を忘れられずにいた。
興奮と快感。
恐ろしいほどに
他のことを考えられなくなる。
まーくんはセックスがしたいわけじゃないと言ったけど、
私はもう一度
あの感覚を味わいたくて仕方がない。
そんな衝動に駆られていた。