まーくんの部屋



追い出されるときが来るまで


まーくんが口にするまで、


黙って気付かないふりをしようと思ってた。



でも…


「まーくん…」



ビクビクするのも疲れてしまう。


それに今なら…


…なんて、淡い期待を抱いていることも事実。



キッチンの横に立つ。


コンロに向かって料理してるまーくんが振り向く。


その距離、約1メートル。



やっぱりこのまま、黙ってた方がいいのかな。


追い出されるときが少しでも延びるように、今まで頑張ってきたけど


まーくんの優しさを受けすぎて、心が弱くなってしまっているよう。


少し早まってしまったとしても


ちゃんと心の準備をして、もう安心してしまいたい。



自分で働けるようになるまで、私のホームレス人生は続く。


次の人を探す間、いや見つけてからも


まーくんのことを思い出せば、強く生きていけそうな気さえする。



だから、もういい。


安心してしまいたい。



胸の前で指先をいじる。


それからまーくんへ視線を上げた。



「まーくん…」


またにこにこしながらこっちを見ている。


この笑顔。


見ているだけで心が洗われそうな…



「なに?」


まーくん…



「出て行けなんて言わないで…」





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