まーくんの部屋
「チカ、早くおいで」
まーくんが扉を開けて、向こう側から笑いかける。
何となく、いつもより笑顔に見える。
一方、私はというと…
「ちょちょちょ、ちょ!
ちょっと!ま待って…ください」
「はは、何いきなり敬語。
ほら何構えてんの」
「わっ やっ」
久々の外界は、はっきり言って怖い。
「もー…
ほら、大丈ー夫、大丈夫」
まーくんが手を伸ばす。
「ちょ、ちょ!…っとだけ待って」
靴箱に手をかけて、息を整える。
「ふー… よしっ」
キッと目を扉の外に向ける。
「ほらおいで!」
「んっ」
目をつぶって、一歩踏み出す。
どさっと、まーくんに倒れかかる。
「はーい、いらっしゃーい」
こちらが外界でございます、と
まーくんは私の頭を撫でた。
ただ外に出るだけなのに、なんてバカな光景だろう。
そんな私に付き合ってくれて、
まーくんは本当に世話焼きで辛抱強い人だ。