まーくんの部屋



大きな窓ガラス越しに毎日見ていた景色に、私は踏み出した。


久しぶりの外の空気。


さすが東北、


あの街とは気温が全く違っていた。




ファミレスの店内にある雑誌で調べて、この駅の周辺にある働き口を見つけた。


この駅にはファミレスがたくさんあるらしい。

いや、この街が都会だから、これが当たり前なのかな。


とにかく、私が面接に行こうと思ったのはまたファミレスだった。



食べ物のバイトをするとご飯がもらえる、と『お得なメリット系体験談』に書いてあった。

食べ物がもらえるなんて、今の私にこれほどまでピッタリくるバイトはあるだろうか。




その雑誌によると、面接はそのお店に電話して予約を取らないといけないらしいけど、

私にはそんな余裕はなかった。

そもそも、電話なんてどこからかければ良かったんだろう。

ケータイはとっくに充電が切れていたし、

今時公衆電話なんて、探している間にまたお腹が空いてしまいそうだ。





お店の中に入り、いらっしゃいませと言われたから

「バイトを希望したいんですけど…」

というと、その若い店員さんは一瞬「嘘だろ」って顔をして、

奥に偉い人を呼びに言った。



あの顔は、この服のせい?

それとも、ずっとお風呂にも入れていないこの汚い見た目?


そう考えると、私のバイト志願にはほとんど希望がないのではと感じた。



そして案の定ダメだった。




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