まーくんの部屋
『~~…ん台、北仙台です』
仙台と聞こえたので、着いたと思って窓の方に振り返ると、
違う駅だった。
違ったけど、この記憶にあるホームは…
言葉のかけらが脳内で組み合わさっていって、
ある一言に完成しそうになった。
あのときの記憶
言葉、 熱、 感触…
その一言はきっと、…『怖い』
記憶が生々と思い出されてきて、
目を離したいのに、離し方が分からない。
心臓が音を立てて波打って、
顔からじわっと汗がでる。
!…
唇を震わせていると、手に温かい感触が宿った。
「チカ… 恋人同士なら手つなごっか」
見透かしたようなその目は、
さっきと同じような体勢でこっちに向けられている。
まっすぐ前を向きなおした私は、何も言えず
手はするっと大きな手に包まれた。
何だか涙が出そうだった。
でも、それはまーくんには見られてはいけない気がして、必死でこらえた。
我慢しすぎて、唇から血が出ていた。