EXIt

　パシッ！

　と、小さな音。

　おじさんのパンチが戸度橋の顔に当たった。殴り合いなど慣れていなので、平手で打てばもっと良い音がして、殴った感はあったはずだ。

　間の抜けた感じである。

「やったな！」

　戸度橋はおじさんの胸倉をつかみ、右手を握りしめアゴから上に向けてパンチを出した。

　アッパーのつもりだろうが、アゴから頬を抜けて音はなく、痛くなさそうだった。

　でも、おじさんの顔は真っ青である。見た目より戸度橋のアッパーは効いたのかもしれない。おじさんは続けて攻撃していないので、ビビっているのは明白だ。

　歯無はすぐに戸度橋の背後から回り、羽交い絞めをした。