EXIt
 壁に黒いスプレーで『EXIt』と書いてある。

 歯無は『t』の文字だけがなぜ小文字なのかと疑問に思って立ち止まった。もちろん罠があるのではと疑ったからだ。

「止まったな」

 歯無は声がする横を見た。

 鉄格子の向こうに無精ひげをはやした四十代前半の男がいた。白い半袖と黒い短パンは薄汚れていて、洗濯はもちろん風呂にも入っていないようだ。

「ここはどこです?」

 歯無は臭いので、下を向いて話した。

「チテイジン国だよ」

「それは知っている」

「そうか、それじゃあ、自分の場所に戻ってレベル2に行けるように辛抱しなさい」
< 41 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop