EXIt
 正直、歯無はほっとした。語野字がいなくなったことである。考え方が違う人間とは打ち解けるのに、時間がかかりそうだからだ。

 今はチテイジンの追っ手からも完全に逃げ通し、普通の生活に戻ってから本当にほっと出来るのだろう。

 だが、現実は見通しが暗い。

 ここにいる『レベル2』の人たちは『レベル3』に昇格したい人ばかりなのだろう。『レベル1』の待遇の悪さを経験すれば降格は誰も望まないはずだ。チテイジンから完全に逃げ通せる保障がなければ選択肢はなく、『レベル3』に昇格するしか残されていないのだ。

 チテイジンの正体がわからないまま、歯無はじっと待つしかないのだ。希望は江利牧に会い逃げ通せる方法を見つけなければならないのだ。

 歯無は満腹になると、本来の目的を思い出したのだ。さっと立ち上がり、辺りを見回した。
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