君が、イチバン。
「久しぶり、だな。」
驚いた顔をした、と思ったのは一瞬で、すぐ鰐渕さんはあの頃見慣れていた息を抜くような笑みを返す。
「ワニ君どうしたの?」
可愛いらしい声が聞こえて、陳列の間から小柄な女性が飛び出した。
ほんと最悪だ。なんで、今。
逃げ出したくて、それなのに、
「あ、…れ?椎那ちゃん?」
小柄な女性、奈津美さんは零れ落ちそうに大きな目を開いて、私を見つける。
助けて。
この場から逃げ去りたくて、息が詰まる。
「失礼ですが、どちら様ですか?」
我に返ったのは穏やかな声が空気を変えてくれたから。
「あ、椎那ちゃんの前の職場で一緒だったんです。足を止めさせてごめんなさいっ」
奈津美さんは一条さんの方を向いてキョトンとした顔をした後、慌てて小さく頭を下げていた。それから、ニッコリ笑う。
「椎那ちゃんの彼氏さんかな?」
無邪気な瞳に、悪意のない口調。奈津美さんは相変わらずだ。
「…いえ、今の職場でお世話になってるんです」
乾いた声に限界が近いんじゃないかと思う。