君が、イチバン。
「今口説いている最中ですよ」
「えっ?」
「急いでいるので失礼しても?」
笑う、一条さん。有無を言わせない笑顔だ。これ直視したら何も言えなくなるのは身を以て知っている。案の定奈津美さんはポカンとしたまま立ちすくんでいた。
一条さんのリップサービスで徐々にいつもの感覚が戻る。
もう大丈夫だ、そう思ったのに、そのままこの上なく艶やかな微笑みを浮かべた一条さんは私の手を自然に握った。
「奈津美、迷惑だろ…行くぞ?」
鰐淵さんの低い声。
「そんなに急かさないでよー!あ、椎那ちゃん携帯変わったでしょ?交換しようよ」
咄嗟に拒む理由が見つからなかった私は携帯を差し出す。
そして、鰐渕さんと奈津美さんに背を向けて私と一条さんはコンビニを出た。
突然の再会は、確かに私を動揺させて、だけど今はさりげなく繋がれた温かい手に安心しろ、と言われているようで、私は一条さんに小さくありがとうございますと言った。