君が、イチバン。
奈津美さんは彼は絶対自分に戻ってくると私に言う。
『椎那ちゃんの気持ちが落ち着くまでは許すわ』
奈津美さんはそう言った。
私の気持ちが落ち着く事なんてあるのか、許すって何をと、とにかく動揺は隠せなくて頭が真っ白だった。
二人の関係をもっと聞いておけばよかったのか。何も知らないまま傍にいた日々がママゴトの様に感じて、目眩がする。
鰐淵さんが私の様子がおかしい事に気付いてくれたけど、私は何も言えなかった。臆病なのか卑怯なのか。それでも私を見つめる黒い瞳を離したくなくて、向き合わなければいけないのに出来なくて、胸が痛かった。
それから、奈津美さんが復帰して、店のスタッフの私への態度が明ら様に変わった。「泥棒猫」とか「大した顔じゃないくせに」とか「よくいられるよね」と悪意を平然とぶつけられれば、店の雰囲気を壊した事に気付いて自己嫌悪を繰り返し、もう私の居場所はないと思った。
そして、奈津美さんが復帰して二日目、中々休憩から戻らない奈津美さんを呼びに行くとロッカーでうずくまる彼女を見つけた。