君が、イチバン。
「浩太さんね、あ、岡本さんの名前なんだけど。ヒーローだったんだ」
「えぇ?」
岡本さん、浩太って名前だったのか、いやそこじゃない。ヒーロー?なんかそれ聞いた事あるんだけど!本当だったの!なになに、まさか手からクモの糸とか飛ばすの⁈マントで空とか飛んじゃうの⁈
「戦隊モノのヒーロー、分かる?」
「そっちね!オッケー!」
テンション上がってきた。もしかしてファンタジーな話になるのか。
「あれの中の人なんだよ、彼」
ものすごく現実的な話だった。
「偶然撮影現場を通りがかってさ、面白そうだから見てたら超かっこ良くて!黒の人がほんとにかっこよくて!多分黒の回だったんだね!活躍してたもん!撮影終わったら握手してもらおうと思って見てたらさ、」
岡本さんだったと。そこからの展開は早かったらしい。偶然にも岡本さんは実家住まいの真衣の家の近くがジョギングコースで、毎朝一緒に走り、距離を縮め、昨日めでたく付き合う事になったと。
「なんか、すごい。真衣、なんかあんたすごいよ」
そういえば、岡本さんは真衣を見た事あるって言ってたな、そういう事だったんだ。
「ほんっと何があるか分からないよね!私の恋はヒーローと共に走るだよ」
名言だ。
「本当、運命だよ…。もう彼しかいないわ、出逢えた奇跡にありがとう」
もはや恋する真衣を止められる人などいないだろう。名フレーズが飛ぶように出てくる。
「おめでとう」
私の言葉に真衣は幸せそうに笑った。ご馳走様だ。あ、そういえばかずまん、失恋決定だな。