君が、イチバン。
そんな頭のハテナを無視して本当に五分後、ピンポンとチャイムの鳴る音がして瑛ちゃんが立っていた。
「えいちゃんっ!」
「しいちゃんっ!」
「いや、テンション真似しなくていいから」
瑛ちゃんは、なんで?と首を傾げた。
「どうしたの?とりあえず寒いよ、入って」
外からの風が氷をぶつけられてるみたいに寒い。
寒さに弱い瑛ちゃんの鼻も少し赤い。
「しいちゃん」
部屋を通そうとした私に、低い声で瑛ちゃんが名前を呼ぶ。え、今度はなに。
「それ、どうしたの?」
瑛ちゃんの視線は私の左頬にある。忘れてた。
「あー…転んじゃって」
「顔だけ打った?」
「そうそう」
ピラリ、と左頬の冷えピタを剥がす瑛ちゃん。
「へえ、綺麗な手形だね」
「ええ⁈なにそれ、かっこ悪い」
「あまり手が大きくないから女の子かな?」
「本当なの?あの子手形とかどんだけ!」
怨念なの?そうなの?やだこわい。焦って、鏡を見る。鏡に映るのはだらしない格好をした私で、その頬は赤いけど、手形なんてついてない。
瑛ちゃんがニッコリ笑った。