君が、イチバン。
事務所に行く途中、ゆかりさんに会った。
「ねえ!若ちゃん!揉めたって⁈」
すごいテンションで私の腕を取る。何が揉めたのかな。乳?乳なの?
「四宮君の取り巻きってほんとガキ!」
乳じゃないらしい。
「いや、大丈夫ですよ。やり返しましたし」
ヘラッと笑った私にゆかりさんは爛々と瞳を輝かせて、ギュと腕に力を込める。ゆかりさん、痛いよー。
「あー、若ちゃんみたいな子、うちに欲しかったなー!出会うのもう少し早かったらなー!悔しいわー!!」
「うち?」
妹に欲しかったって事なのかな?
「うん。私こうみえて昔レディースの総長だったの!四露死苦!いぇい!」
妹分の方だった!ゆかりさんヨロシクって漢字でいっちゃった!
「ははは」
棒読みで笑う私に、「あの子達バカだよねー!私にどうとかして下さいって行ってきたからばっちり蹴り飛ばしたよ。卑怯なの大嫌いだし。テメェのケンカはテメェでブッこめって感じ」と最後の方、やけに迫力ある感じで言った。うん、冴草さん、ここ学校でしたかね?不良がいました。
「それでいつから二人はそんな関係なの?四宮君も『好きだよ』とか言うの?あの子のお兄さんがバイオレンスな頭だったけど四宮君は更にキレやすいんでしょ!四宮君華奢に見えるけどやっぱり脱いだらすごいの?」
途中ものすごく不穏な話が挟まった気がする。お兄さんがアタマ?バイオレンスな頭?ヘッドと読むの?なにそれ、想像斜め上。よし、忘れよう。はい忘れたー。
適当に受け流して会話を終えようとするけどゆかりさんの食付きは思ったより強くて私を中々離さない。肉食獣だ。
「…ゆかりさん?少し若咲さん借りますね?」
会話を止めたのは穏やかな口調。
「話込んでる所、悪いですけど」
微笑む姿は有無を言わせないあの微笑だ。一条さんこわい。
「清くん?ずるいよー」
ゆかりさんはブツブツ言いながら素直に一条さんに私を引き渡した。