君が、イチバン。
「そうですね。今日は用意していませんが、先日先に撮影を済ませてあります。メインはチョコレートケーキになるでしょうね、」
そう言った後、何か考えるように言葉を止めた。
「…ケーキ、ですか。うん、何故今日用意しなかったんでしょう。ファーストバイトを忘れていました。曽根君に買ってこさせましょうか」
ファーストバイトは、結婚式お互いにケーキを食べさせる行為だ。曽根君は、あの若いギャルソン君のことだろう。
「ファーストバイトを撮影するんですか?間に合わせで買ってきたケーキで良いんですか?」
良いのなら良いんだけど。
「そうですね…」
一条さんは更に何かを考える仕草をしたあと、私を見つめる。なんだ。
「若咲さん」
「はい?」
「作りませんか?」
「ええ?」
固まる私に一条さんはおかまいなしに、これは良いことを思いついたと微笑む。
「ケーキ屋さんで働いてましたね?JOUJOUでしたか。一度だけ行った事があります。若咲さん、まだカメラマンが来るまで時間はありますし、」
作ってみましょうか。と一条さんは手を差し出した。