君が、イチバン。

まさかの展開に、差し出された手と一条さんの顔を交互に見ながら呆気にとられる。何を言い出したんだこの人は。


「ウェディングケーキを作れとは言いませんよ。ウェディングケーキの撮影は終わっていますし、来客に振舞われるデザート感覚でかまいません。無理ですか?無理だったら仕方ないですね。パティシエとは名ばかりだったんでしょう、急遽Laiのスタッフが作ったケーキという謳い文句は良いアイデアだと思ったのですが申し訳ないです」

一条さんの毒は、魔物だ。名ばかり、という言葉に反応してしまった。

「…出来ます」

普段なら、その手を取るはずなかったのに。
完成されたこの空間に、私が作ったケーキを並べてみたい、と思わされたじゃないか。


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