君が、イチバン。
「若咲さん、一息つきたいでしょうが、もう一仕事頑張れますか?」
一条さんの言葉に、え、なにと構える。一条さんは苦笑して、
「撮影ですよ」
とドアの方を指差した。
完全に忘れてた。
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それから、あれよあれよとあっという間に美容師さんとメイクさん二人がかりで変化していく容姿。確かに花嫁さんだ。
真っ白なゴージャスフリルなドレスは胸元にスワロフスキーのスパンコール、腰の所に一際目を引く大きなリボンがついていて可愛い。そこからチョコレート色のレースが大胆に広がって覗く様に割れている。館とかにあるカーテンみたいだ、カーテン。
「お人形さんみたいですね」
一条さんはニコニコ私を眺めた。
「いや、てゆうか…一条さんも素敵なお召し物で…」
目の前の一条さんもビターな色のタキシード姿。モデル体型なだけによく似合ってる。普段は隠れている淡い瞳が惜しげも無く晒されているのは眼鏡を外しているからだ。
一条さん、花婿さん役なの?かっこよすぎるだろう。
「行きましょうか」
一条さんにエスコートされて店内に向かう。
「じゃ、撮影始めますねー」
アシスタントの人の掛け声で、一条さんは私の腰に腕を回した。
「清一郎君に任すから」
カメラマンは親しげに一条さんの名を呼ぶ。リラックスしろと言われてもこんなに注目される事なんてないから緊張するし、何だかのぼせてきた。
「若咲さん?」
一条さんは全く平然としていてむしろ慣れてる様で。ほんとこの人何者。
腰に回す手も、些細な動作も時々かける言葉でさえ場慣れしていて、動きが自然で、「初々しい花嫁で嬉しいですね」なんて軽口さえ叩いている。こっちはいっぱいっぱいなのに。