君が、イチバン。
アパート近くに着いて、車から降りる時、ありがとうございましたと色んな意味をこめて頭を下げた。
「こちらこそ。助かりました。無理をさせたのに応えてくれる若咲さんは貴重な人材です」
一条さんの言葉にへへっと照れる。やだなぁ、褒め殺される。
「…そういえば四宮君と付き合ってるんですか?」
不意に聞かれた一条さんの質問に私は眉を上げた。いきなりなんだ。もっと誉め殺してくれるんじゃなかったのか。
「いえ?」
一条さんは大して興味なさそうに「そうですか」と頷く。社内恋愛禁止なので、みたいな感じかな。
微妙な沈黙が流れて、それをあっけなく破ったのは、
「じゃ僕と付き合いませんか?」
一条さんのびっくり発言だ。
「か、からかわないで下さい」
何を言い出すんだ、一条氏。ウェディングマジックにやられたのか。
一条さんは軽く肩で笑っただけで、真意は測れない。
ただ、その目線かゾクリとする位艶っぽくて焦る。
「なんとも思って無い方にキスなんてしませんよ」
もう、ちょ、助けて。