君が、イチバン。
奈津美さんが泣きそうに笑った。
「…やっぱり、椎那ちゃんってすごいね。わに君が惹かれたの分かるな。辛かったよね、ごめんなさい」
「謝らないで、奈津美さん。私、」
謝られたら、きっと許してしまう。仕方なかったと思ってしまう。ううん、もうそんなのどうでもいい、
「鰐渕さんが好きだったんです。すごく、すごく」
その気持ちだけは本当だったと分かって欲しかった。
「…うん」
とうとう泣き出した奈津美さんに私も目の奥が熱くなる。それと同時に冷やし固めたなにかがゆっくり溶けていくのを感じた。
「鰐渕さんは、今日、その、」
会っている事を知っているのだろうか。言い終わる前に奈津美さんが頷く。
「言ってあるよ、わに君もそうか、って。変わらないの、ぶっきらぼうなとこ」
赤い目のまま苦笑した奈津美さんは、幸せそうで、私も、そうですか、と小さく応える。
「もし、もしよかったら、店を勝手に辞めて申し訳ありませんでした、と伝えてくれませんか。嫌だったらいいんです。ただ、ずっと気にかかっていて」
奈津美さんは、うん、うん。とコクコク頭を縦に下げてくれた。
自分で言えたら一番いいんだけど、多分もう会うことはないだろうから。