君が、イチバン。
瑛ちゃんはいつも私を甘やかす。居心地が良くて、手放せなくなる前に、私は瑛ちゃんから離れた方がいいんだろう。
「…ねぇ?」
「ん?」
「いつか、おじいさんおばあさんになってさ、お互い独り身で自由気ままに生きていたら二人で世界一周旅行でもしようよ」
そんな未来も良いんじゃないか。
「気の遠い話だね」
瑛ちゃんは苦笑するけど、今リアルに離れる日がくることを考えているんだよ、バカヤロー。
「私、おばあさんになってもずっと一人な気がする」
「大丈夫、しいちゃんを一人になんてしないから」
微笑む瑛ちゃん。胸がキュウと音を立てる。
「瑛ちゃんは優し過ぎるよ」
優しさは時に罪なんだよ、
「…優しくないよ?」
穏やかで甘い目線は出会った時から少しも変わらない。
「瑛ちゃんが本気で好きになる人は幸せだね」
自分で言いながらチクリと胸が痛む。その理由は知らない。
「…どうかな?」
瑛ちゃんの口調と規則的に撫でられる手に瞼が重くて、ゆっくりと流れる沈黙に睡魔は勝てない。
「し…ちゃ…あ…よ」
いつの間にか眠ってしまった私は最後の言葉は聞き取れなかった。