君が、イチバン。
幕間
幕間
■■■
ぶは、と口をあけて笑う若咲椎那に、四宮は、困惑していた。
何故か、それは単純に彼の好みの問題だ。
…これはやばい。…タイプど真ん中じゃねーか。
新しいバイトが入ると聞いた時は別に興味はなかった。
ただ久しぶりに女を雇うと聞いて何人かはよく話題にしていたけど。
美人だとは向坂さんが言っていた。
確かに、美人だ。長い髪に軽くウェーブがかかっていて無造作に分かれた前髪から少し釣り上がった二重瞼の大きな瞳が覗く。ぽてっとした唇が『可愛い』と言うより『美人』にしている。
ただ、別に特別美人な訳じゃない。四宮の周りにはいつも飾り立てた美女が寄ってきたし、他の従業員の彼女も皆美人。
けれど、こんなに気持ち良く笑うのは目の前の若咲椎那が初めての事だった。
四宮が働く前から女性は雇わない方針に変えたらしいけど、向坂さんの気紛れか、雇われた若咲に四宮は漠然と向坂さんの女の一人だろうと思っていたのだがどうやら違うようだ。
なんていうか、毛色が違う。
一条さんにも四宮にも向坂さんにも、美形率の高いこの職場のだれにも媚を売る視線をしてない。
それは四宮にとって新鮮で、充分興味を惹かれるものだった。