君が、イチバン。

とんでもない

◆◆◆

気怠るい体を引きずってLaiへ向かう。そういえば瑛ちゃんちに懲りずにまた財布忘れたらしい。コンビニは鬼門だ。休憩の時にでも取りに行かねば。


ーーーー

事務所には一条さんがいて、私を見つけると、おいで、と手招きする。

「この間の、出来たみたいですよ」

「この間?」

「綺麗に映ってます」

良かったですね、と渡された薄い雑誌。表紙には、『あなたが決めるBestウエディング特集』。ああ、あれだ、と思えば嫌な緊張がしてきた。

一条さんに終始リードされたあの撮影、思い出のケーキは使われているのか。

何ページ目かにあのチーズケーキ型レストランの写真を見つけて目線をスクロールさせていけば、店内のカット、それに初々しいカップルの新郎とばっちり目が合った。使われていたのは、庭のベルの下で愛を誓い合う後ろ姿のショット。もうひとつは頬を染めた花嫁の手からパクリとケーキを食べる良い男。その斜め下に可愛い指のマークで吹き出しがついていて、『ワンポイント!新郎さんが食べているのは花嫁さんが手作りした愛のチョコレートケーキ!』と書かれてあった。ケーキの全体写真も載っている。

間違えてないけどな!花嫁だけどね!


「花嫁がケーキを作るという案が面白かったらしくて、その説明になりました。そのサービスも反響があれば取り入れるようになりそうですよ」

「はぁ」

というか、恐ろしくカップルなんだけど。

「嫌でしたか?」

一条さんが不安気に聞く。嫌?そうじゃない。

「いえ、元々食べさせる写真だけの為だと思ってましたし、それがアイデアに繋がったのなら良かったと思います」

それに、どういう形であれ、自分の作ったものが掲載されるのは単純に嬉しかった。

「良かった」

一条さんが微笑む。眩しい。


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