君が、イチバン。
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「若ちゃんすごー!うまー!すごー!」

午後10時、のんべぇ閉店後、包装したチョコレートケーキを渡せば、ゆかりさんが目をキラキラさせてばくばくと食べてくれた。遅い時間帯なのにカロリーも気にせず口元にチョコレートをつけたゆかりさんの子供みたいな表情は可愛いくて仕方ない。

「若ちゃんありがとうー!愛だねー!愛なんだねー!」

発砲スチロールみたいなセリフを吐いて後ろから間違いなく抱きつこうとしていた沖君は華麗にスルーした。躓いて、ひどい、とか言ってたけど目の奥が輝いていた。気のせいだと思いたい。
一条さんは穏やかに笑ったまま、「光栄ですね。義理チョコを貰うのは初めてです」とさらりと毒を吐いた。相変わらず過ぎて泣ける。
ーーーそれでもみんな喜んでくれて、ああ作ってよかったな、と純粋にそう思えた。

「で?おまえは俺にもその他大勢と同じか。無神経女」

四宮君には喜んでもらえなかったらしい。


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