君が、イチバン。

四宮君が今度こそ怒ったように口を曲げた。

「ほんと、面倒くさい女だな」

「うるさいよ」

言われなくても分かってる。だけど、もし自分の気持ちを問い詰めたら瑛ちゃんとの関係は壊れる。そんな子供じみた独占欲でいきなり壊すくらいなら今のまま、何も知らない、何も問わない、緩やかに終わる、そんな関係で良い。

「俺はな、おまえの飄々とした所は好きだよ。だけど、諦めが早いとこは好きじゃない。怖いのか?なんで?馬鹿じゃねーの。そんなんだとおまえはその内なにもかも失うぞ」

「…四宮君には関係ない」

なんだよ、もう。四宮君はちっとも優しくない。中途半端な優しさもくれずに痛いとこばっか突いてくる。どんだけ経験値が増えたって、攻撃的な言葉には弱いんだぞ馬鹿ヤロー。

「関係ないね。だけど、困る」

四宮君はどこまでも目を逸らさずに、逃げ出したい私を離さない。

「ちゃんとしてこい。じゃないと、おまえが俺に惚れねーだろ」

そんなこと、どうだっていいくせに。逃げ出したい私に逃げるな、と無理矢理押す優しさを私が無視できないと知ってる口調じゃないか。


「…バカヤロー」


呟いた声に四宮君は不適に笑って、私の手を取った。


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