君が、イチバン。

「…ん、…しいな?」

まだ起きそうにない瑛ちゃんの瞼に軽くキスをする。


「起きた?」


「…起きてない」


瑛ちゃんはくすぐったそうに目を瞑ったまま笑いながら答える。


「…ご飯にしよ?」

耳元で囁くとまた少し笑ってやっと目を開ける。

「作ってくれた?」


「うん」


私の返事に欠伸をしながら「じゃー食べる」と起き上がった。


いつもは綺麗な二重瞼が浮腫んで一重になったその顔は少し可笑しい。それでもバランスの取れた顔立ちはイタズラっ子みたいで可愛い。


キスも好き。端整な顔立ちとそのスタイルも目を引く部類だし、身体の相性もいい。性格は今まで傍にいた誰より一番合うと思う。

彼氏じゃないのが惜しいくらいだ。しかし、残念ながら瑛ちゃんには途切れる事なく不特定多数の美女がいる。バー勤めと言ってもホストみたいな仕事だと言っていたし、時々知らない女性と一緒にいる所を見かけるから。深くは聞かない。知らんぷりだ。
忙しい日々の合間を縫って不規則に瑛ちゃんはいなくなるし、詮索するなんてしたくない。

別に、瑛ちゃんを恋愛感情で見ている訳じゃない。中途半端な関係が長く続いてるせいで瑛ちゃんと恋愛する自分なんて正直想像出来ないし。
連絡を取らない時は何ヶ月も会わないし、別に何も求めない。

瑛ちゃんっていう人間が好きなのだから。


所謂、セフレだと、言われればそれまでで。決して偉ぶれる立場ではないし、ビッチといわれれば、そうですね。と認めるよ。



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