君が、イチバン。


瑛ちゃんのアパートから出るとそのまま家に帰る。
途中、何となくコンビニに立ち寄った。


目当ての雑誌を義務的に手に取ると、レジに向う。店員さんが「784円です」と言ったから財布を探したが、ない。
やばい、瑛ちゃんちに忘れたんだ。
財布忘れたんでやっぱいいです、と言い終わる前に、

「どうぞ」

と言って千円札が渡された。そこにいたのは一条さんだ。

これは予想外。

「あ。」

間抜けな自分の声に冷や汗をかく。
何故ならレジに置かれた雑誌のタイトルが非常に怪しいからだ。何故これオンリーチョイスした自分。
一条さんはいつもの微笑で軽く会釈をすると何も言わず店員さんに千円札をわたす。

「い゛っ、いいです!」


「遠慮しなくていいですよ?」


いやいや遠慮じゃなくてどうか勘弁して下さい。

慌てて否定したけれどその穏やかな笑みはどこで得たのか有無を言わせない表情。
穏やかな口調にめげず必死に抵抗したけど、続く押し問答に視線が集まるのを感じて渋々頷いた。

一条さんの視線も自然に雑誌に向う。しかし無言だ。


雑誌のタイトルは
『目指せ!金持ちへの道。~!掴むのは夢か!?金か!?~』


穴があったら入りたい。





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