君が、イチバン。

必ず返します、と言ったけれど一条さんは構わないと言った。
色々良い訳がない。とりあえず「ありがとうございました」と一条さんに頭を下げる。そしてどうか忘れて下さいと心の中で付け足しておいた。


「いえいえ」


一条さんは私の様子に笑いを堪えている感じだ。

「…若咲さんがあんなに焦る所初めて見ますね」

「私も初めてあんなに焦りました」


私の相変わらず力ない返事に一条さんは当々吹き出した。


「すいません、若咲さんは飽きないですね」


どういう意味だ。一条さんはまだ笑いながら私を見た。

「色々言い訳したいので、とりあえず突っ込んでください」


深い溜め息をつくと一条さんの笑いが収まるのを待つ。


「化粧はしてませんね?」


その言葉に化粧をした覚えがないからそういえばそうだったなと気付く。

「ええ…まあ」

それより早く雑誌の事に触れてくれ。

「服装が昨日のままですね。朝帰りですか?」

正確には昼帰り?

「友達のとこに泊まってたんで」

嘘じゃないし。

「そうですか。若咲さんは化粧をしなくても可愛いですね」


いや、そんな社交辞令はこの際どうでもいいんで。

「それから靴サイズ間違えてますよ」

…?

慌てて足元を見ると確かに男物のサンダル。
瑛ちゃんの履いてきちゃったんだ。
いつも泊まった時はこのサンダルが履きやすいから借りてたんで癖になったらしい。



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