君が、イチバン。
「聞きたいのは、そこじゃありませんけどね」
一条さんが今度は苦笑して言う。じゃあなんなのか聞く前に、一条さんの携帯が鳴って、手を振る動作だけで挨拶をすませると、一条さんは優雅に去っていった。分からない人だ。私は軽く溜め息をついた。
帰ってから支度をすると程よく出勤時間になる。
店までの距離はアパートから遠くないから自転車で行けない事もない。だけどやっぱり夜道は危険だから、車で通勤。
お陰でペーパードライバーだった私もかなり運転は上手くなったと思う。
従兄が車馬鹿で無駄に何台も所有してる。割りといい会社に勤める彼が30過ぎて未だ独身なのは車の為に働いていると言ってもいいからじゃないかと思う。
マイカーを持ってない私は従兄の使ってない車を借りた。
まだいじってない車で綺麗だからと快く貸してくれたけど
またこれが厄介。
可愛くもなんともないスポーツカー。
出来ればコンパクトな車に乗りたい物だと無駄にクラッチの踏み込みが重い従兄の愛車に乗って家を出た。