君が、イチバン。


一晩明けても昨夜の自分の行動が理解出来ない四宮は、今日のシフトが椎那と被る事に気付いて溜息をはく。
どんな顔して会えばいいんだ、とか気まずい空気を想像して益々仕事に足が向かない。
けれど、開店時間はもう迫っていて、モヤモヤ考える前にその原因の声が聞こえた。

「おはよー」

いつもと変わらない椎那。


「…おはようございます」

なんだよ、普通じゃん。面白くねー。じゃあどうだったら良かったというのか。理不尽な自分を振り切るように背を向けた。


「あ、ちょっと四宮君借ります」


椎那が笑顔でフロアが一緒の只野さんに声を掛ける。聞き間違いかと思う隙もなく、有無もゆわさず引っ張られる様に資材用の空き部屋の方へ連れて行かれる四宮。
その間長い距離じゃないけど四宮の前を行く背中、恐ろしく無言。


物置に着いて椎那はやっと四宮を振り返ると相変わらず営業スマイルを張り付けて四宮を見つめた。
感情の読み取れないその表情に四宮は少し戸惑う。

「…何?」


やっと口を開いた四宮に、彼女は無言でしなやかな冷たい手先を四宮の首の後ろに回した。


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