君が、イチバン。
向坂は、店から必要なものを取り出すと、これからの予定を考えて悪戯に笑う。四宮の様子では行く気はなさそうだけれど無理矢理連れて行こう。
無表情な子が不愉快に表情を変えるのを見るのは面白い。勿論、それが女の子なら笑顔に変えるに限るが。
「到着」
向坂は女なら誰でも落ちるんだろう笑みを深めて、スムーズな運転で車を停めると、当たり前の様に四宮に言った。
「…ここ、俺んちじゃないですけど」
向坂が停めたのは街中の駐車場。
四宮が「少し寝ます」といって目を瞑ったのは都合良かった。尤も、四宮にとっては特に広がらない会話が面倒くさかっただけであったが。
「俺一人で登場なんて寒いでしょ?」
向坂の口調に四宮は溜め息をつく。
結局、引きずられる様に明るい居酒屋へと連れられた。