君が、イチバン。
「貴女のような人は初めてです」
一条さんは私の手を引いて立ち上がらすと、耳元で声を落とす。
「どういう意味でしょう」
「そのままです」
至近距離にその端整な顔が近づいて、眼鏡の奥の瞳に光が入って、ぞくり、とする。
これは、やばい。
「口説いてますか」
へらり、と笑って距離を置いた。危なすぎる。
一条さんはまた可笑しそうに目を細めて、私の腕を引いた。
瞬間、
ーーー重なる唇。
デジャヴだ。相手は違うけれど。どうしてくれるまたビッチレベルが上がったじゃないか。
至近距離で見つめると益々端整な顔立ちは形の良い唇を端だけ上げて笑う。
「口説いてますよ」
捕食者の目だ。
絶対的に逆らえないなにか。
固まる私に、一条さんは笑みを深くして、
「……と言われたいですか?」
と悪戯に笑った。
もうやだ、この人。完全にSキャラだ。心臓に悪い。
「行きましょうか」
一条さんはキスなんてまるでなかったかのようにクイと眼鏡を上げてもういつもの穏やかな表情に戻っていた。