君が、イチバン。
アパートから少し離れた場所に停まる白いハイブリッドカー。
運転席に座る端正な顔立ちは遠目からでも分かる。
いつもと変わらないスーツ姿。
近づいて、トントンとウインドウを叩くと、一条さんが助手席に目配せをした。乗れということですね。
向かったのは、円形でチーズケーキみたいな色合いの可愛いレストランだ。大きなガラスから見える庭には手入れされた薔薇のアーチに白いベル。流行りのレストランウエディングが出来るのだと思う。
店内は白い洋館の様なインテリアでハート型のシャンデリアが可愛い。女の子の夢が詰まった様な店だ。チョイスの理由は分からない。
レストランなんてファミリーラストランしか思い浮かばない私の行動範囲は狭いのだ。
「一条様、お待ちしておりました」
若いギャルソンが少し緊張した様に頭を下げる。
一条さんが私の背中にそっと手を触れてエスコートする。
店内の女性客の目を引いてるのにこの人はまるで気にした様子はない。
席に案内されて違和感たっぷりの一条さんとの食事が始まった。
前菜が運ばれて、スープに魚料理、どれもすごく美味しい。
「素敵な店ですね」
「気に入りましたか?」
「はい、宝石箱みたいな店ですもんねー」
別にメルヘンな訳じゃない。ほんとにそんな店内なのだ。なにこのセレブ感。目の前の一条さんと相乗効果でどこかの令嬢にでもなった気分だ。
ディナーでなくて良かった。確実に一条さんに落ちるわ、これ。