君が、イチバン。

と、思ったのに、何故かその一分後には助手席に座る四宮君。

「どーしてもって言うなら乗ってやるよ」

いや、言ってない。

「なにアホヅラしてんだ?帰るぞ」

ちょ、四宮君。色々酷くないか。
何か言えば、返ってくる言葉にダメージを負いそうだったからやめた。私は大人、私は大人。

家の方向を聞いて車を走らす。車内では沈黙を少し古い洋楽が覆い隠して、別に気まずさはない。

「なぁ」

「ん?」

「この車、おまえの趣味なの?」

「違うよ!違うよ!」

「…なんで二回も言うんだよ」

大事な事だからに決まってるだろう。

「じゃ、誰の趣味なわけ?」

突っ込むね。誰でもいいでしょって言ったらムスっとしそう。

「誰でもいいでしょ」

あ、言っちゃった。

「…」

案の定黙り込む四宮君。なんだかなー、ほんと面白いよねー、こうストレートだと意地悪したくなる。

「おまえ、ほんとムカつく」

「ですよねー」

だけど、こんなの四宮君限定だから。言わないけど。




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