君が、イチバン。
うわぁ、聞きたくない。ドロドロのゴジゴジなんだよ、絶対。それでもってかなり盛られた話なんだよ、一条さんのあの氷点下の笑顔怖いんだよ。
「どうしてでしょう」
しかし、私はゆかりさんのこのキラキラした目も無視できる程肝が座ってない。人間関係をうまくするコツは常にアホの子でいる事だ。
ゆかりさんは一息つくと、考える様な仕草をする。
「まあ色々あったんですかね」
言いにくい話なら全然いいですよ、と気持ちを込めてみる。
「向坂さんの彼女だったの」
ゆかりさん言っちゃった!結構速攻で言っちゃった!
「あの向坂さんが本気になった唯一の人」
演技がかった溜息を大きくつくゆかりさん。そして続く怒涛の物語。
要約すると愛ちゃんの気持ちを知った向坂さんはすったもんだの末身を引いて、一条さんは愛ちゃんを傷付けないように(ゆかりさん談)付き合ったけど、事情を知らない向坂さんと一条さんのファンに愛ちゃんはリンチをくらいそうになり、更に向坂さんが曖昧な一条さんの気持ちを知って激怒。
殴り合いのど突き合いで、一条さんの眼鏡は一度破壊されたらしい。
ほら、ドロドロのゴジゴジじゃんか!何割増しかに話を盛ったと考慮したら本筋が見えないくらいゆかりさんの話は大袈裟に聞こえる。
でも語られるような何かがあったとしても一条さんと向坂さんの関係は傍目には良好だし、葛藤なんて感じさせない二人は大人だ。
実際一条さんの気持ちは分からないけど、誰にでも触れられたくない過去はあるもの。