君が、イチバン。
なんだかんだで結構平らげて、一条さんが当たり前のようにお支払いする。時間のあるメンバーで食事をするのはよくある事らしくて、その度向坂さんか一条さんが支払うらしい。流石だ。
「あ、そうそう!!さっきまで、鰐渕君も来てたわよー」
みんなが一条さんにご馳走様、大将またヨロシク、と絡んでいる最中、おばちゃんが、良い事教えてあげたでしょ!みたいな顔で言った。
「ソウナンデスカ」
久しぶりに聞いた名前に、瞬間、心臓のあたりが痛い。名前だけで、まだこんな破壊力あったのかと、冷静に思っても返事は棒読みになってしまった。
「そうそう!久しぶりだから一緒じゃないのかと思ったら別口だったのねえ、またいらっしゃいよ」
ニコニコと笑うおばちゃん店員に曖昧に笑い返す。
…偶然会うなんてことなくて良かったと、心底思っている私は上手く笑えているだろうか。
まだその名前で緊張感の残る胸を撫で下ろす。
ーーー
ゆかりさんと井村さんは和馬君を連れて次に行くらしい。長沼さんは帰って行った。私は店に車を置きっぱなしだし仕事のある一条さんと一緒に来た道を戻った。