オルソ
閃光。間をおかずして爆音。
もう叫ぶ気力すらない。走る、走る。
「あっ!ちょっとストップ、そこの兄ちゃん!」
早く逃げないと、アイツが落ちてくる。
「ちょッ、待てーゆうとるやんか!そこのキミ!」
道路わきに止められた黒塗りベンツ。目には入ったが脳まで伝達がいかない。
リアウィンドウ開けて叫ぶ女の怒声も、聞こえていても、理解できなくて。
「待てっ!ちゅうか止まれっ!兄ちゃん!そこのハンサム君!」
走れ、走れ、速く、速く。
商店街のアーケードに入った瞬間。
背中に強烈な閃光と爆音、そしてしつこい女の怒声を感じたが、感覚の失せた一太郎の足が止まることは無かった。