オルソ
バー「オルソ」
要するに、雷が苦手なのだ。
愛機であるバイク「シャドウ400」を嵐の中ほっぽりだしたまま、久我一太郎は、自身の最高速度爆裂更新中のスピードで、長い足をもつれさせるようにして、古びたビルの地下1階に転がり込んだ。
全身ずぶ濡れなのも忘れて、来たそのままの勢いで、店らしき木製の洒落たドアを引きあける。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
入った瞬間、なんともいえない甘い香りがした。
それを嗅いだ瞬間、強張っていた四肢から、一気に力が抜けていく。