私の兄は、アイドルです。
「えー、沙那も彼氏いるし……
フリーは私達だけになっちゃったね、音遠……」
「あ、うん……」
澪からのイキナリの振りに、慌てて返事した。
あー……そっか。
フリー、かぁ……
なんかみんなに彼氏が出来てくると、
嬉しいんだけど……
取り残された気持ちになるような……
──沙那は、茶髪ボブの美人。
中学の頃から付き合ってる、同い年の彼氏がいるんだ。
確かもう2年だっけ?
ボケッとしながら考えてた私は、
またもやイキナリ話を振られて慌てた。
しかも……その内容に、
心臓が僅かに――
跳ねた。
「音遠に澪、2人ともさぁ?
好きな人とかいないの?」
ニヤニヤしながら尋ねてくる、美夜。
……美夜に悪意が無いのは、分かってるんだ。
だって
知るわけ無いから。
これは
私自身しか知らないから。
けど……だけど
どうしても
怯えてしまう
どうしても
思い出してしまう。
大嫌いなハズの
“アイツ”の存在を。
「私は……っ、
まだ“好き”とか……
よく分かんないや……」