私の兄は、アイドルです。
―――――
「もー信じらんないっ!
あそこで見付ける!?
フツー!しかも話掛けるなんて!」
「うっせぇなぁ。
お前の友達に、兄妹だってバラされなかっただけマシだろうが」
──その日の夜。
旅行から帰ってきた私は、
仕事から帰ってきたお兄ちゃんを責め立てた。
「あーうざいっ!
なによあんなエセ笑顔振りまいちゃってさ!」
ソファでゴロゴロくつろいでるお兄ちゃんに向かって
思い切り睨み付けながら
こう言った私。
――ズキンと痛む胸は、
少しも治まらない。
あんな笑顔、澪に向かってしちゃってさ?
私には……
滅多にしてくれないのに。
私、“妹”なのに。
なんで“他人”には微笑むのに
“妹”の私には、冷たいの?
「それより、音遠?
お前俺様に黙って旅行行きやがったなぁ?あ?」
「そそそそれは……」
私の気持ちなんて、
知るはず無い。
私の胸の痛みなんて、
知るはず無い。
「まぁ、いーけど?
こうして無事に帰ってきたしな」
デリカシーも何もない
私のバカ兄が……
そう言って、“ナオト”の様に微笑むから。