私の兄は、アイドルです。
「……はぁ!?
ダメダメ、絶対ダメだからね!?」
ズキン ズキンと
痛む胸を抑えながら
必死に普通を装って
『友達を想う妹』
を演じるけど――
「何、お前。そんなムキになりやがって。
まさか――俺のコト、好きなの?」
――口元は笑ってるのに
あまりにも真剣な眼差しで
私を見てくるから――
「……っ、バッカじゃないの!?
……大っ嫌い…っ!」
思わず口に出た言葉は、
普段から言ってるハズの言葉で。
バタバタという足音を響かせながら
バンっ
――私は、リビングから逃げ出した。
「あ、そ。
大嫌い、か……
…………良かった。」
お兄ちゃんがこんな事を
ポツリと呟いたなんてのは、
私は全然知らないけど。
――私自身……
もう、後戻りも出来ないくらいに手遅れだった。
─────
────