私の兄は、アイドルです。
「………そ。じゃあな」
素っ気なく答えた声と、
パタンという扉の音が
やけに大きく感じた。
「はぁ……」
……やばい、自分。
顔が熱い。
お兄ちゃんが玄関のドアを閉める音を確認して
のそのそと起き上がり、
学校に行く支度をする。
正直足はフラつくし、
頭はボーっとする。
何とか制服を着終わった私は、全身鏡で身だしなみをチェックして、自分の顔を見つめる。
顔、赤……
両手で両頬を触ってみる。
あっつー…
熱のせいかな……
……ううん、違う。
…………どうしてこんな風になっちゃったんだろ……
……さっき、お兄ちゃんがおでこを触ろうとした瞬間……
……ありえないくらい、
熱が上がった。
――もう私は、
『普通』の妹じゃない。
『普通』の妹の反応じゃない。
『普通』の気持ちじゃない。
……『普通』のお兄ちゃんへの気持ちじゃない……
そう思うと……
……地獄に叩き落とされた気がした。