私の兄は、アイドルです。
校門には、遠目でも分かるくらいに軽く人だかりが出来ていて。
だけど、人だかりの人達は“その人物”に話し掛けることはなく。
……だって、やっぱり
オーラが違うもん。
腕を組みながら校門にもたれかかり、
少し大きめのサングラスをかけて俯いている。
Tシャツに細身パンツといった普通の服装なのに、
それらがまるで“その人”の為に作られたかのように、悔しいくらいに似合ってる。
――そんな人、滅多にいやしない。
15年間見てきたんだもん、間違える訳がない。
……その姿を見つめ、
また、ドキンと心臓が鳴った。
「ねぇねぇっ、声掛けちゃわない?」
「いいねっ!」
美夜と沙那が意気揚々と話し合い、
その人物に声を掛けようとした瞬間――
「すみませー」
「ちょっと!何してんの!?こんな所で!」
「「「音遠!?」」」
――私は、叫びながらその人物の腕を掴んでいた。汗。
「こんの……ボケっ!
学校行くなっつったろうが!」
するとたちまち浴びせられる怒声。
「ご、ごめんなさい……」
こ、こわい……!
怒ってる……!