私の兄は、アイドルです。
 



怒ってるけど、顔は心配してて。




「朝から熱あんのに……

……と、まだ全然下がってねぇじゃん」




ドキンっ……



お兄ちゃんのひんやりとした手のひらが、火照った私のおでこに当たる。



たったそれだけのコトで跳ねる心臓には、まだまだ慣れないけど……


その温度差が、とても気持ちいい。




「……ん……」



何故か抵抗する気になれず、その手をすんなり受け入れた。




相も変わらず心臓が煩いのは、きっと熱のせいだ。



――そう、熱のせい。





そんな私を見たお兄ちゃんは




「帰るぞ、バカ音遠」



そう言ったかと思うと




「ん……っと、きゃっ……」


「……はぁ、バカ。
フラついてるし仕方ないから担いでやるよ」


「ちょっと……!
下ろしてってば……っ!」




なんと――


――私を、お姫様抱っこした。汗。



いやいやいやいや……
無いでしょう、普通。

兄妹でお姫様抱っことか……


ありえないっすマジで。




お兄ちゃんの両腕の中で、精一杯ジタバタする私。

そんな私の耳に入ってくる、お兄ちゃんの声。



 
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