私の兄は、アイドルです。
 



途端に辺り一面に響き渡る、
明らかに近所迷惑としか言いようがない歓声。


……いや、悲鳴かも。





「えっ?えっ?なんで4人勢揃いしてるの!?」



尋常じゃない声量と状況に狼狽える私を見て、

何故か笑ってる豊さんに春さんに優希さん。




だけど、私の質問に答えてくれたのは3人じゃなかった。




「なんでって……なんでだろうな?なぁ直人。」


「あー……渡さん。
今移動中……」


「そうそう。仕事中だよな?直人。」


「……珍しく五月蝿いですね、渡さん」


「そりゃあウルサくもなるさ。直人、次の仕事押してるんだからな?」




……運転席で時計を確認しながら言う、渡さんは……


……なかなかの具合でイライラしていた。



お兄ちゃんは、私を座席に座らせてから
渡さんに向かって頭を下げて謝ったかと思うと




「悪いな、みんな」



他メンバーにも頭を下げて謝った。





……まさか、仕事中にわざわざ……?






「出して」



お兄ちゃんのその一言で、車は動き出し。


まるでゾンビのごとく次々と溢れる女子達を後に、

私達を乗せた車は学校を後にした……――





―――――

 
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