私の兄は、アイドルです。
美夜と沙那は……
中学の時の友達みたいに、私を利用したりしないよね……?
―――
『私達、親友だよね?
だからお願いっ!協力してくんないかな?』
『音遠んち行きたいな~!ナオトの部屋見てみたいし!』
『あっ、今日携帯忘れちゃったんだよね~……
音遠の携帯さぁ、ちょっと貸してくれない?』
『音遠ってさぁ、ホントいいよね?あんなかっこいいお兄ちゃんがいて。
ねぇ、お兄ちゃん私にくれない?』
―――
返信出来ていないメール画面を見つめ、目を瞑った。
――ダメ。
思い出すのは、
心の底の真っ黒な記憶ばかり。
誰も信じられない日々。
……引きずり込まれそうになる。
あと1つ、気になるのが……
「澪から……連絡ないなぁ……」
ナオトを好きなはずの澪から、何の連絡も無かった。
不思議で、心配で――
――少し、怖い。
「あーっ、そろそろご飯の下拵(したごしら)えでもするかぁっ!」
軽く伸びをした私は、
ベッドから起き上がってキッチンに向かおうとしたんだけど……
ピンポーン
鳴り響いた玄関のベルが、耳に入った。